岐阜県内の建設業の元請・下請の経営者や現場管理の担当者に向けて、「偽装一人親方」と言われる問題の考え方を解説します。実態は雇用されている働き方なのに、一人親方として扱われているケースがあり、国土交通省が対策を進めています。雇用契約が必要になる働き方の目安と、元請・下請が確認することを整理します。
偽装一人親方とは
一人親方とは、従業員を雇わず、自分で仕事を請け負う技能者のことです。本来は、仕事の進め方や時間を自分で決め、請負代金で働きます。
ところが、社員と同じような働き方をしているのに、雇用契約を結ばず「一人親方」として扱われる場合があります。この場合、社会保険(健康保険・厚生年金保険・雇用保険)の負担を避ける目的ではないかと疑われます。国土交通省の資料では、社員と同じような働き方をしている一人親方とは、雇用契約を結び、社会保険の加入手続きをする必要があるとされています。
雇用契約が必要になる働き方の目安
国土交通省の資料では、次のような一人親方について、元請が雇用契約の締結を促すこととされています。
- 10代の技能者
- 経験年数が3年未満の技能者
- 「働き方自己診断チェックリスト」のBに多く当てはまる技能者
働き方自己診断チェックリストの確認項目
このチェックリストは、一人親方と、一人親方に直接仕事を発注する建設企業が使うものです。Bの回答が多い場合は、雇用契約を検討します。確認項目には、たとえば次のようなものがあります。
- 他社の仕事にも従事しているか
- 材料や資機材を自分で手配しているか
- 報酬の決まり方
- 代わりの人に仕事を任せられるか
- 作業時間や仕事の配分を自分で決められるか
- 仕事の依頼を断る自由があるか
請負契約で注意したい点
国土交通省の資料では、次のような契約に注意が必要とされています。
- 報酬が、労働時間や日数によって変わる契約
- 労災保険の特別加入費用や必要経費が反映されず、雇用されている同種の技能者と同程度の報酬になっている契約
労災保険の特別加入については、当サイトの労災保険の特別加入の記事で解説しています。
元請・下請が確認すること
元請には、次のような確認が求められます。
- 作業員名簿の社会保険欄を見て、未加入などとなっている技能者がいれば、下請企業に確認する
- 一人親方の場合は、下請企業に再下請負通知書と請負契約書の提出を依頼し、契約内容が適切か確認する
- 一人親方本人に、現場での実際の働き方を確認する
- 雇用保険に加入していない一人親方は、請負契約書の内容と実態を確認する
下請企業は、一人親方に仕事を出す前に、チェックリストで働き方を確認しておくと安心です。書類を整えるだけでなく、実際の働き方が請負の実態に合っているかが大切です。
確認を怠るとどうなるか
社会保険に入っていない技能者が現場に多いと、保険料を負担している会社との間で、公平な競争が成り立ちません。また、働く本人にとっても、けがや病気、老後の保障が手薄になります。
会社にとっては、後から実態が問われ、社会保険の手続きや費用の対応が必要になる可能性があります。具体的な扱いは事案によって異なるため、迷ったときは専門家に確認しましょう。
最新の動きを確認しましょう
国土交通省は、「適正でない一人親方の目安」を令和8年度以降に策定する方針を、過去の検討会の資料で示しています。現時点の目安は、上で紹介した資料に基づく暫定的なものです。今後、基準や様式が見直される可能性があります。最新の目安とチェックリストは、国土交通省の案内で確認してください。
岐阜県の建設現場での確認イメージ
たとえば、岐阜県内の元請が、下請から届いた作業員名簿を確認する場面を考えます。名簿に18歳の技能者が「一人親方」として載っていた場合、10代の技能者に当たるため、雇用契約の締結を促す対象になります。また、経験年数が2年の技能者が一人親方として入場する場合も、経験3年未満に当たります。
こうした技能者が見つかったときは、現場で止めるのではなく、まず下請企業に契約の内容と働き方を確認し、必要に応じて雇用契約への切り替えを相談する、という順で進めましょう。
現場で使える確認チェックリスト
- [ ] 作業員名簿の社会保険欄に、未加入の技能者はいないか
- [ ] 一人親方について、再下請負通知書と請負契約書をそろえているか
- [ ] 年齢が10代、または経験年数が3年未満の一人親方はいないか
- [ ] 働き方自己診断チェックリストで、Bが多い技能者はいないか
- [ ] 報酬が、労働時間や日数に連動していないか
- [ ] 本人から、実際の働き方を聞き取っているか
よくある質問
Q. 一人親方は、すべて雇用契約にしなければなりませんか。
A. いいえ。国土交通省の資料は、社員と同じような働き方をしている一人親方について、雇用契約と社会保険加入が必要としています。実態が請負であれば、一人親方として働くこと自体が否定されるわけではありません。
Q. チェックリストでBが多ければ、すぐに違法になりますか。
A. Bが多い場合は、雇用契約を検討する目安とされています。個別の判断は、実態によって異なります。迷うときは専門家や窓口に相談しましょう。
まとめ
- 社員と同じような働き方をしている一人親方とは、雇用契約を結び、社会保険に加入する必要がある
- 10代、経験年数3年未満、チェックリストのBが多い技能者は、元請が雇用契約を促す対象とされている
- 報酬が労働時間や日数で変わる契約には注意が必要
- 元請は、作業員名簿、再下請負通知書、請負契約書、本人の働き方を確認する
- 判断に迷うときは、社会保険労務士などの専門家や、岐阜労働局などの窓口に相談しましょう。
※本記事は令和8年10月26日時点の情報です。最新の取扱いは、国土交通省の案内でご確認ください。
参考
- 国土交通省「国土交通省における規制逃れを目的とした一人親方対策について(説明会資料)」 https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/content/001710056.pdf
- 国土交通省「第7回建設業の一人親方問題に関する検討会 資料」 https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/content/001722115.pdf
- 国土交通省「社会保険加入にあたっての判断事例集」 https://www.mlit.go.jp/common/001140379.pdf



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