岐阜県の中小企業・建設業者の経営者や総務担当者向けに、給与のデジタル払いを導入するときの手順を解説します。令和5年4月から、一定の要件のもとで、賃金を資金移動業者の口座へ支払えるようになりました。労使協定、本人の同意、会社が労働者に説明することを整理します。
給与のデジタル払いとは
労働基準法では、賃金は現金で支払うのが原則です。例外として、労働者が同意した場合は銀行口座などへ振り込めます。令和5年4月からは、この例外に、厚生労働大臣が指定した資金移動業者の口座への支払いが加わりました。これが「賃金のデジタル払い」です。
資金移動業者とは、銀行以外で送金サービスを提供する事業者のことです。会社は、指定を受けた事業者の口座にしか賃金を払えません。
導入に必要なこと
導入には、会社と労働者の両方の手続きが必要です。
- 指定資金移動業者を選ぶ
- 労使協定を結ぶ
- 希望する労働者に説明する
- 労働者から個別に同意を得る
- 就業規則や給与規程を見直す
指定資金移動業者を選ぶ
厚生労働省のサイトで、指定業者とサービス名の一覧が公表されています。令和8年7月1日現在の一覧は、次の4社です。
| 事業者名 | サービス名 | 指定年月日 |
|---|---|---|
| PayPay株式会社 | PayPay給与受取 | 令和6年8月9日 |
| 株式会社リクルートMUFGビジネス | COIN+(スタンダード) | 令和6年12月13日 |
| 楽天Edy株式会社 | 楽天ペイ給与受取 | 令和7年3月19日 |
| auフィナンシャルサービス株式会社 | au PAY 給与受取 | 令和7年4月4日 |
一覧は更新されることがあります。導入前に、必ず厚生労働省の最新の一覧を確認してください。
選ぶときは、口座残高の上限額、1日あたりの払出し上限額、手数料の有無と金額を確認します。これらは業者ごとに設定されていて、会社と業者の個別の調整では引き上げられません。
労使協定を結ぶ
過半数組織労働組合、またはない場合は過半数代表者と、労使協定を結びます。記載する事項は、次の4つです。
- 対象労働者の範囲
- 対象となる賃金の範囲と金額
- 取り扱う指定資金移動業者の範囲
- 実施開始時期
労働者への説明と同意
会社が説明すること
希望する労働者には、デジタル払いに関する必要事項を説明します。あわせて、預貯金口座への振込など、ほかの受取方法も示します。取扱金融機関や指定業者は、1社に限らず複数を用意する必要があります。
労働者向けの資料では、次の点が案内されています。
- 口座には業者ごとの受入上限額があり、超えた分は、あらかじめ指定した銀行口座へ自動で出金される
- 賃金の一部だけをデジタル払いにし、残りを銀行口座で受け取ることもできる
- 少なくとも毎月1回は、手数料なしで払い出せる
- 業者が破綻した場合は、保証契約にもとづき残高が弁済される
同意の取り方
同意は、会社自らが得ます。書面のほか、電磁的記録でも可能です。次の情報をあわせて確認します。
- 口座への振込に必要な情報
- 受け取りを希望する額
- 指定代替口座(上限超過分の受け取りなどに使う預貯金口座)
労働者が希望しない場合に、デジタル払いを強制してはなりません。強制すると労働基準法違反となり、罰則の対象になり得ます。
導入後の注意点
- 指定が取り消されたり辞退されたりした場合は、労働者に確認のうえ、労働者が指定する別の方法で支払います。
- 支払いの事務や期限は業者ごとに異なります。導入する業者のサービス内容を確認しましょう。
導入前のチェックリスト
- 厚生労働省の最新の一覧で、指定業者を確認したか
- 口座残高の上限額と、払出しの上限額を確認したか
- 手数料の有無と金額を確認したか
- 過半数組織労働組合、または過半数代表者と、労使協定を結んだか
- 就業規則や給与規程の見直しが必要かを確認したか
- 銀行口座など、ほかの受取方法を示せる準備があるか
岐阜県の中小企業での進め方の例
従業員20人ほどの岐阜県の会社で、若い従業員から「給与をスマートフォンの決済口座で受け取りたい」と相談があったとします。この場合、まず会社として導入するかを決め、導入するなら労使協定を結びます。その後、希望する従業員にだけ説明し、同意を得ます。希望しない従業員は、これまでどおり銀行口座への振込のままです。
よくある質問
Q1. 全従業員を、デジタル払いに切り替えてよいですか。
いいえ。労働者が希望しない場合に強制することは、労働基準法違反となります。希望した人だけが対象です。
Q2. 給与の全額をデジタル払いにする必要がありますか。
労働者向けの案内では、賃金の一部だけをデジタル払いにし、残りを銀行口座で受け取ることもできるとされています。
Q3. 労働者が後で銀行口座に戻したいと言ったら。
労働者向けの案内では、デジタル払いを選んだ後でも、受取方法を銀行口座に戻せるとされています。
まとめ
- デジタル払いは、厚生労働大臣が指定した資金移動業者の口座への賃金支払いです。
- 労使協定の締結と、労働者の個別の同意の両方が必要です。
- 銀行口座など、ほかの受取方法も示し、強制はしません。
- 上限額や手数料は業者ごとに異なるため、導入前に確認します。
- 指定業者の一覧は、厚生労働省の最新の公表で確認します。
判断に迷うときは、社会保険労務士などの専門家や、岐阜労働局などの窓口に相談しましょう。
※本記事は令和8年10月26日時点の情報です。最新の取扱いは、厚生労働省・岐阜労働局の案内でご確認ください。
参考
- 厚生労働省「賃金のデジタル払いの導入にあたって」 https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001282164.pdf
- 厚生労働省「賃金をデジタル払いで受け取るにあたって」 https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001282165.pdf
- 厚生労働省「指定資金移動業者一覧」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/zigyonushi/shienjigyou/03_00028.html


コメント